歯周病は成人の8割がかかっていると言われるほど、国民のほとんどの人がかかっている国民病で歯を失う一番の原因となっています。そのため「歯を失う」を病気としてよく知られていますが、「命に関わるわけでは無いから」と、少々軽く扱われがちな傾向があるようです。しかし、 歯周病はただ「歯が抜けてしまう」だけの病気なのではないのあなたは知っていますか?

歯周病と言うのは、虫歯とともに、歯を失う原因となる病気です。どちらの病気も口の中の細菌感染によって引き起こされますが、原因となる細菌はそれぞれ違います。つまり虫歯は何種類かの虫歯菌、 歯周病は何種類かの歯周病菌が原因となって起こります。虫歯は虫歯菌の出す酸によって、その歯そのものが溶かされてダメになってしまう病気です。一方、歯周病は歯周病菌の出す毒素が歯を支えている周囲の組織を破壊し、次第に歯を支えきれなくなり最後に歯が抜け落ちてしまう病気です。
ただし、歯周病にかかっていきなり歯が抜け落ちてしまうのではありません。歯周病はほとんどの場合、それほど症状を出すことなく、何年も何十年も時間をかけて、ゆっくりと進行します。そのため、自分が歯周病にかかっていることに気づかず、はっきりとした症状を自覚する頃には 既に手遅れになっていると言うことが決して少なくありません。特に「痛くなってから歯医者に行く」タイプの人は歯周病が悪化するリスクが高いので要注意です。

歯周病はひどい口臭を引き起こす病気としてとても有名です。ひどい口臭、となるとまずは歯周病を疑う、といってもいい位です。これは歯茎の内部に住み着く歯周病菌の出すガスや、歯茎から出てくる膿が原因となっています。歯周病が 重度になればなるほど、歯磨きをしても口臭を消すのが難しくなってきます。また、自分自身は臭いに慣れてしまっているので、自分が気づかないうちにひどい口臭を撒き散らし、周囲の人を遠ざけてしまうことにもなりかねません。

歯周病になると、歯の支えが弱くなるので、歯が動きやすくなってきます。そのため噛んだりしているうちに、だんだんと歯の位置がずれて、前歯に隙間が開いてきたり、歯が出っ歯になってくる、と言うことが起こってきます。

歯周病は歯の周囲の組織を破壊してしまうだけでなく、血管などを通して全身の病気を起こす原因にもなっていることがだんだんと証明されてきています。歯周病が原因となって起こる病気としては次のような病気が報告されています。

歯周病菌が心臓の心内膜に付着して「細菌性心内膜炎」を起こすことがあります。また、歯周病菌は血管を狭くしてしまったり、血栓を作りやすくしたりすることがわかっており、それが原因で、心筋梗塞や狭心症を引き起こすことがあります。

歯周病菌が脳の血管に入り込むと、血管を狭くして血栓を作り、脳の血管が詰まる「脳梗塞」を起こすことがあります。

糖尿病にかかっている人は、免疫力が低下するため、歯周病にかかりやすくなります。しかしそれだけではなく、細菌歯周病にかかっている人は糖尿病が悪化すると言う逆の関係もわかってきました。

高齢となり気管の反射機能が衰えると、口の中の細菌が、唾液や食べ物を飲み込む際に誤って肺の方へと入りやすくなります。そうすると誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。誤嚥性肺炎を起こす細菌の正体は、多くの場合歯周病菌であるとされています。

妊婦さんが重度の歯周病にかかっていると、お腹の赤ちゃんに悪影響与えることがあります。歯周病菌が血液中に入り込み胎盤をとってしまうためであると考えられています。

関節リウマチは、遺伝が原因の場合も多くありますが、最近では歯周病菌が原因となって起こる場合があることがわかってきました。

肥満やメタボリックシンドロームの人は歯周病の罹患率(りかんりつ)が高い、と言う調査結果が出ています。原因として、歯周病菌の出す毒素が肝臓や脂肪細胞に脂肪を蓄積させているのではないかと考えられています。

アルツハイマー型認知症で亡くなった人の脳からは高頻度で歯周病菌の出す毒素が検出されることがわかっています。また、歯周病で歯を失うことで、噛む機能が低下し、脳への刺激が少なくなることも、認知症を引き起こしやすくする原因になると考えられます。

口の衛生管理が不十分で、口の中に歯周病菌がたくさんいると、インフルエンザにかかりやすく、口を清潔にしている人ほどインフルエンザにかかりにくい、と言うことが研究の結果で報告されています。

歯周病によって命に関わる病気につながる可能性があることをお分かりいただけたかと思います。歯周病をケアすることで全身の様々な病気を予防することができます。歯周病は予防するのが1番です。自宅でのケア、歯科医院での定期的ケアをきちんと行い十分に予防することは可能です。でも、もし既に歯周病にかかっているとしてもあきらめる必要はありません。歯周病は進行性の病気とは言っても適切なケアを継続していくことで進行を止めることができ、口の中の歯周病菌を極力減らすことができます。

健康の為にも歯周病ケアに力を入れていきましょう。